とあるスタイリストの活動から始まったチャリティイベント物語

2003年から開催されているシンガポール唯一のシェービング募金・提唱イベント「Hair for Hope」は、日本でいう「24時間テレビ」のように歴史があり認知度の高いイベントです。

2015年より、シンガポールのQB HOUSEはこのイベントのオフィシャルヘアスタイリストスポンサーとなっており、歴史を遡ると、単なるサポートだけではない、プロフェッショナルな熱い想いがそこにはありました。

「Hair for Hope」 とは

Hair for Hope のアイデアは、 CCF のボランティア グループによって発案されました。
がんの子どもたちが受けている試練を理解した9人のボランティア が、CCFの毎年恒例の募金活動「チューリップ・ハート・デー」に合わせ、がんの子どもたちへの意識を高めるため、象徴的な行為として頭を丸めることを決めました。

はじまりは20年前のシンガポール進出

2002 年、競合他社も多く乱立する中、QB HOUSEはシンガポールへ進出しました。QB スタイリストの向上心から生み出される高い技術力と丁寧な接客力、他社に簡単に真似できない衛生基準の担保、そしてスタイリスト同士の強固なチームワーク力で、ヘアカット専門店としての認知と信頼を着実に築いていき、現在30店舗ほどまでに拡大しました。

そのような成長期真っ只中の2006 年頃から、QB シンガポールのスタイリスト数名が有志で休日に高齢者施設へ出向き、外出が困難な高齢者を対象に無料でカットをするボランティアカットを始め、その活動やクオリティの高さが評判を呼びました。

「Hair for Hope」との出会い

一方で2003 年、小児がん財団のChildren's Cancer Foundation(CCF) が、「Hair for Hope」を立ち上げました。

毎年5月から6月まで、まずは学校や会社を会場にして小規模なサテライトイベントがシンガポール国内数か所で実施され、7 月末には大規模商業施設「VivoCity」にてメインイベントが開催されます。

以来20年続く「Hair for Hope」は現在、各所で募金活動もおこなわれるだけでなく、イベント開催期間中の参加者は毎年、のべ5,000人を超え、"一つの場所に人が集まって同じこと( 頭をシェービング)をする"という意味では、シンガポールで最大級のチャリティイベントへと成長しました。

そして2012 年。これまでのQB シンガポールのボランティア活動の実績と、10 年間に渡りシンガポールでヘアカット専門店としての地位を着実に築いてきたQB HOUSEの信頼を買われ、シンガポール政府機関から直接「スタイリストとして『Hair for Hope』に参加しないか」と声をかけてもらったことをきっかけに、運営側として参加することになりました。シンガポール政府機関から直々に声がかかったことがとても喜ばしく、「自分たちの技術で社会貢献できるなら!」という熱い想いで溢れ、「参加するならばより高いクオリティを!」と一致団結していきました。

ついに、「Hair for Hope」のオフィシャルスポンサーに就任

「Hair for Hope」のサテライトイベントに参加するようになった当時、オフィシャルヘアスタイリストスポンサーはもともと他の理美容店が務めていました。しかし、そのほとんどは学生ボランティアで「とにかく丸坊主にするだけ」という意識が強く、クオリティが低かったことが課題でした。そこで主催者であるCCF は、2012 年からサテライトイベントに参加しているQB HOUSEの実績とそのクオリティを高く評価、熱いラブコールをいただき、ついにQB HOUSEは2015年からオフィシャルヘアスタイリストスポンサーに就任することになりました。「自分たちの技術によって社会の役に立てる!いいことができる!」という楽しく嬉しい気持ちと、「責任の重さからくる少し不安」な気持ちが入り混じる複雑な想いで私たちは受けとめました。

「ただ丸坊主にするだけではない」―メインイベントで見えた価値―

実はオフィシャルヘアスタイリストスポンサー就任1 年目、多くの参加者を丸坊主にするため、人海戦術をとりQBスタイリスト以外の友人・知人にも声をかけ、イベント運営に全力を尽くしていました。スタイリスト約40 人が2 日で3,000 人の頭を丸坊主にし終えて気づいたこと、それは「ただ丸坊主にするだけではない」ということでした。子どもたちをサポートしたいという熱い想いで壇上にあがってくれた一人ひとりの気持ちに対して、質のよい技術力で返すことがオフィシャルヘアスタイリストスポンサーとしての役目と知ったのです。

さらに、会場にはのべ20 万人以上が集まることもあり、その一人ひとりの想いを体現することに、自分たちの技術が一役買っているということも強く感じました。一人ひとりの意識はもちろん大事ですが、一人の力では成し得ない。QB HOUSEは、翌年からスタイリストをすべてQB スタッフとし、一致団結と熱い想いの連鎖を繋げていくことを決意しました。

「Hair for Hope」がQB HOUSEに与えたインパクト

会社として毎年5月~7月の間の売上の一部を寄付していますが、社会に与えたインパクトとして、イベントきっかけでQB HOUSEを知った求職者の反応が意欲的なこと。「私もぜひボランティアスタイリストとして参加したいので入社したい」という人が出てきました。もちろん既存社員からも参加したいとの声が多く、コロナでリアル開催が見送りとなっていた3年間、「今年は開催するのか?」という質問も後を絶ちませんでした。繰り返す日々の業務とは違う経験に刺激を受けることはもちろん、自分のスキルで他の人を助けられること。これが一番の参加意欲に繋がっているのです。

「Hair for Hope」は、ただ募金を集うだけでなく、丸刈りにすることで病気に立ち向かう子どもと同じ境遇に立ち、その姿を多くの人に見てもらうことで、生きる勇気を共有し合える唯一無二のイベントです。自分のカット技術をもって尽くせることを実感したときに、熱く込み上がる気持ちを抱くことができるイベントなのです。